ピロリ菌について

【ヘリコバクター・ピロリ菌（以下、ピロリ菌）とは？】 ピロリ菌とは、胃の中に生息する、大きさ0.5 × 2.5～4.0μmで、数本のべん毛を持つ菌です。尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、アンモニアで酸を中和することにより、強酸性の胃内で生息しています。 ピロリ菌は、古くは井戸水を介して感染するといわれていましたが、現在では乳幼児期に母親または父親から感染する、家族内感染がほとんどです。衛生環境の整った現代ではピロリ菌感染者は減ってきていますが、日本国内での感染者は約35%といまだに高水準です。 【ピロリ菌による胃の病気】 ピロリ菌に感染すると、生涯にわたって感染が持続することが多く、慢性胃炎を引き起こします。その結果、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなど様々な病気を引き起こします。 特に胃がんのリスクは、感染していない人と比べると、約15〜20倍も高いといわれています。 そのためピロリ菌に感染していることが判明した場合、除菌が推奨されています。 　　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 進行胃がん(2型) 進行胃がん(3型) 【ピロリ除菌の流れ】 ピロリ菌がいるかどうかを調べるためには、呼吸の検査（尿素呼気試験）、血液中の抗体を調べる方法、便の抗原を調べる方法、胃カメラで粘膜を採取して顕微鏡で調べる方法などがあります。これらの検査を受けるためには、保険上のルールとして、胃カメラを受けて慢性胃炎が確認されることという条件があります（胃カメラは必須となります）。そして、慢性胃炎とピロリ菌の存在が確認できた場合に、ピロリ除菌の適応となります。 除菌の方法としては3種類の薬を7日間内服し、約2ヶ月後に呼吸の検査（尿素呼気試験）で除菌が成功したかを確認します。薬の副作用として、下痢、味覚障害、アレルギー、発疹（薬疹）、アナフィラキシーショックなどが起こる可能性があります。 【除菌に成功しても定期的な胃カメラは必要です】 ピロリ除菌に成功すると、胃がんのリスクは低下（0.34〜0.66倍へ減少）し、除菌が早いほど胃がんの予防効果は高くなります。 しかし、もともとピロリ菌に感染していない人と比べると胃がんの発生頻度は高いといわれています。そのため、特に胃がん高リスクとなる50歳以上では、胃カメラによる定期的な経過観察が必要です（できれば年1回が望ましい）。胃がんの多くは、早期に発見できれば負担の少ない内視鏡治療で治癒することができます。