片頭痛による頭痛は、発作的に起こり4~72時間持続し、片側のズキズキと脈打つような拍動性の痛みを特徴としています。片頭痛の名称の由来は片側が痛むこととされていますが、実際には4割近くの患者さんが両側の頭痛を経験されています。また、非拍動性の片頭痛発作もあります。頭痛発作中は感覚過敏となって、ふだんは気にならないような光・音・臭いを不快と感じる方が多いようです。また、吐き気や嘔吐を伴うことも多く、階段昇降など日常的な動作によって頭痛が増強するため、寝込んでしまい学校や仕事に支障をきたすこともあります。
片頭痛は、頭痛の前に起こる「前兆」症状の有無により「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」の二つのタイプに分類されます。前兆症状は、キラキラした光、ギザギザの光が視界にあらわれ見えづらくなる(閃輝暗点)といった視覚性の症状が最も多く(90%以上)、ほかにもチクチク感や感覚が鈍くなる感覚症状、言葉が出にくくなる言語症状などがあります。通常は、前兆が5~60分続いた後に頭痛が始まります。頭痛が始まる前に、なんとなく頭痛が起こりそうな予感や気分の変調、眠気、疲労感、集中力低下、頸部の凝りといった症状を経験する場合がありますが,これは前兆とは区別して「予兆」といいます。
・片頭痛の有病率は全人口の8%前後と言われているが、30〜40代の女性に限ると20%弱にも達するとされる。
・女性の有病率が高い(男性の4〜5倍)、30代から40代の働き盛りの人にピーク
・医師の診断を受けていない片頭痛患者が80%いると言われている。市販薬でなんとかしのいでいると思われる。
・欠勤や労働能力の低下により一人の片頭痛患者あたり年間150万円の損失。日本全体で年間3600億〜2兆3000億円の経済的損失を生じているといわれている。
・これは頭痛のみならず、間欠期と呼ばれる頭痛発作の前後の時期に肩こりや集中力の低下、疲労感などQOLを低下させる症状がみられる片頭痛の特徴にも起因している。また生産世代で有病率がピークを迎えることも、社会全体の生産性への影響を非常に大きくしている。
・これまで片頭痛には効果的な予防薬がなかった。2021年に「抗CGRP製剤」と呼ばれる画期的な予防薬が登場。大幅な発作と自覚症状の改善が期待できるようになった。具体的には月に10回以上だった頭痛薬の使用が1~2回程度に減る、といった効果がみられる。
・頭痛薬は月に10回以上など使用が高頻度になると脳が痛みに敏感な状態を作り出してしまい、より頭痛の頻度が増えるという悪循環になる(MOH:薬物乱用頭痛)。抗CGRP製剤はこのMOHから抜け出す手段としても非常に高い効果を持っている。
当院では抗CGRP製剤として「エムガルティ」を採用しています。
エムガルディのポイント
エムガルディは片頭痛の発作を抑制する皮下注射の薬です。
初月は2本、その後は毎月1本、最低3ヶ月、おなかに自己皮下注射します。
医療機関で注射することも、自宅で注射することも可能です。
<適応>
・18歳以上で片頭痛の診断がある(妊娠中・授乳中は慎重投与可)
・エムガルディ投与開始前3カ月以上において、1カ月あたりの片頭痛の発作が平均4日以上
・従来の片頭痛予防薬の効果が不十分、または内服の継続が困難
<費用(3割負担)>
初月:30000円前後/2ヶ月目以降:15000円前後
<副反応>
一般的な薬や注射に準ずる過敏症や注射部位の反応
インフルエンザワクチン接種と同程度の痛み
接種を希望される場合、事前の薬の準備が必要ですので、日にちに余裕をもってご相談ください。
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