女性とコレステロール
女性ホルモンのエストロゲンは、体内でコレステロールの代謝を促進し、動脈硬化の進行を防ぐ作用があります。このため、月経が定期的に来ている閉経前の女性は、コレステロールの値が高くなることが少なくなっています。また、50代以下の心筋梗塞の発症率も、男性に比べて大変少ないことがわかっています。
しかし、閉経を迎えると女性の体内からエストロゲンの分泌がなくなり、先述の保護効果が失われます。この結果、50歳前後から女性のコレストロールの値は増加していき、閉経後10年で男性と同じくらいの心疾患リスクをもつようになると言われています。
悪玉コレステロール(LDL)について
コレストロールにはいくつか種類がありますが、最も注意を要するのが「LDLコレステロール」と呼ばれる悪玉コレステロールです。悪玉というくらいですから、このLDLコレステロールの値が高いと動脈硬化が進み、やがて心筋梗塞や脳梗塞を発症させる原因となります。
LDLは下げたほうがもちろん良いのですが、適切な目標値については未だ明確な答えがなく、各国のガイドラインでも毎回目標が変わっているような状況です。わかっていることは、高血圧や糖尿病、喫煙などの他の動脈硬化リスクを持っている場合や、家族性高コレステロール血症と呼ばれる遺伝性にコレステールが高い方に関しては、薬物治療を受けたほうがよいということです。
脂質異常症(高コレステロール血症)の治療
LDLコレステロールが高い状態、脂質異常症に対してはよく運動や食事制限などの生活習慣の改善が推奨されることがあります。しかし、これらの方法でのコレステロール値の大幅な低下難しいことがわかっています(5〜15%程度)。これに対して現在主流のコレステロール薬は、LDLコレステロールの数値を30〜50%以上減少させます。もともと太っていない方など、生活習慣にそこまで改善の余地がない方については、閉経後にLDLの数値が上がってきたらすぐに薬物治療を開始したほうが無駄がありません。
コレステロール薬は、LDL値を下げるだけでなく、「心血管イベントを減らす」「動脈硬化を改善する」「腎機能を維持する」といった直接的な作用ももっています。薬の効果を判断するときは、数値だけでなく、総合的なメリットも考慮することが大切です。
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