鼻水が続いているだけでは、アレルギー性鼻炎と診断してはいけません。季節性(花粉離散時期)、環境的要因(ハウスダストやダニなど)との関連を考慮して診断する必要があります。
こどもは風邪を繰り返して鼻水が出ている場合が多く、その繰り返しにより症状が続いているように見えるため「アレルギー性鼻炎」と診断されている場合があります。
アレルギー性鼻炎の診断基準が設けられていますが、こどもには難しい検査もあり、はっきりとしたアレルギー性鼻炎の診断には、時間経過なども含めて慎重に行う必要があります。
1.アレルギー性鼻炎とは
ハウスダストや花粉などで鼻の粘膜が刺激されて起こる鼻の反応を「アレルギー性鼻炎」といいます。最近では発症の低年齢化も進み、こどものアレルギー性鼻炎も多くみられると言われています。アレルギー性鼻炎は、命にかかわるような重篤な病気ではありません。しかし、鼻のかゆみ、鼻水が続くことが気になって、日常生活に集中できず、学習に支障をきたしたり、鼻が詰まって眠れずに、日中の生活に影響を及ぼすこともあります。こどもの特徴として、大人よりも風邪をひきやすく、さまざまなウイルス感染を繰り返す時期でもあります。風邪と呼ばれるウイルス感染でも、同様に鼻水が出て、くしゃみが出ることも多々あり、保育園、幼稚園、学校など集団生活をしていると、その風邪を繰り返すのもこどもの特徴です。つまり、風邪をひいているがために、鼻水やくしゃみが出ていて、それが繰り返されているため、長く症状が続いているように見えることがあるのです。本当にアレルギー性鼻炎で症状が出ているのか、ただの風邪の繰り返しなのかを見極めないと、不必要な治療が継続されてしまう場合もあるので注意が必要です。現在、クリニックを受診して「アレルギー性鼻炎」と診断されているお子さんの話を詳しく聞くと、ただの風邪の繰り返しであるケースも本当にたくさんあります。また、鼻炎の中にも「血管運動性鼻炎」という病気もあります。気温や体位などにより、体の環境が変わることで自律神経の調節の具合が変化し、鼻づまり、鼻水がでるという鼻炎もあります。鼻水が続く病気をすべてアレルギー性鼻炎として、判断してはいけないのです。今回は、正しいアレルギー性鼻炎の知識、診断、治療を皆さんに知っていただこうと思います。
2.透明な鼻水が出る時にどんな病気が考えられるの?
透明な鼻水、くしゃみ、鼻づまりなどがある場合には、以下のような病気が考えられるため、問診、診察、検査等からしっかりとどの病気に当たるのかを診断していく必要性があります。
・感染による急性鼻炎(風邪をひいたときに出る鼻水)
・アレルギー性鼻炎(花粉症などのアレルギーが関与する鼻水)
・血管運動性鼻炎(周囲の環境に鼻粘膜の局所自律神経つまり、無意識に作用する神経が過敏に反応して症状が生じます。主に寒い、温かいなどの温度の変化が引き金となって発症することが多いと言えます。例えば、朝暖かい布団から抜け出た直後からくしゃみ・鼻水などの症状がしばらく続き、食事を終え出勤・登校・登園の頃になると症状が改善し、周囲の温度に慣れてくると症状が治まってくるという状態をいいます。逆に、夜布団に入って暖まってくると鼻づまりなどの症状がしばらく続き、暖かい居間からヒンヤリとした台所へ移るとくしゃみが出たり、暑い戸外から冷房の効いた室内に入ると「さわやか」に感じるよりむしろ鼻がズルズルと不調になるなども同様の血管性運動性鼻炎にあたります。)
・好酸球増多性鼻炎(好酸球増多性鼻炎はアレルギー検査は陰性ですが、鼻水に好酸球という免疫細胞がかなり増加している疾患のことです。)
・職業上の刺激物による鼻過敏症(物理的、化学的な刺激により鼻炎が起きたものをいいます。職業性にみられることが多いです。)
くしゃみ、鼻水、鼻づまりを症状とする病気は、大まかに上記のような原因に分けられます。その中でも、「感染性の鼻炎」「アレルギー性鼻炎」「血管運動性鼻炎」が多いとされています。
2.アレルギー性鼻炎の診断
アレルギー性鼻炎は以下の診断基準を満たすものとされています。
①鼻水(鼻汁)中の好酸球が陽性
②抗原特異的血清IgE抗体検査の陽性または皮膚試験が陽性
③鼻粘膜抗原誘発検査の陽性:アレルゲン(抗原)を染み込ませたディスク(ろ紙)を鼻腔内の小鼻の内側にあたる下鼻甲介粘膜に置いてアレルギー反応として(1)くしゃみ・鼻掻痒感、(2)下鼻甲介粘膜蒼白腫脹、(3)水性分泌のうち2つ以上の症状が見られる。
こどもに、この診断基準を使用するなら、①と②が現実的です。このほかに問診から、症状が出る状況をしっかりと把握することも重要です。
こどものアレルギー性鼻炎は
①通年性の鼻のアレルギーが多く、多種のアレルギー物質に反応している
②自然に良くなりにくい
③喘息、副鼻腔炎の合併が多い
④症状の表現が不明確
いった特徴があります。これを念頭に置きながら診断する必要性があります。また、症状の表現が不明確なため、症状の客観的評価を問診などから行い、更に鼻鏡検査や鼻水の好酸球検査、皮膚試験、血液検査などを組み合わせて診断する必要性があります。この手順を路まないと安易に「アレルギー性鼻炎」という診断になり、不必要な投薬を受ける可能性が高くなります。医師だけではなく、保護者の方がこのような診断過程を知っておくことで、正確な診断と適切な投薬につながります。
3.アレルギー性鼻炎の診断の流れ
① 問診
②鼻鏡による鼻粘膜の観察
③鼻汁好酸球検査、血液検査or皮膚試験、鼻粘膜抗原誘発検査
④治療開始もしくは経過観察
この診断の流れで、大事なポイントを解説します。
まず問診では、
・どのような時に鼻水が出ているのか(季節性、時間帯はどうか)→アレルギー性か血管運動性の鑑別
・環境要因がどれだけ影響してるか(温度差の影響はないか、ほこりが多い所で症状が増悪していないか)
→アレルギー性か血管運動性の鑑別
・風邪はひいていないか→感染性の鼻炎の鑑別
・家族にアレルギー疾患の方がいるか→アレルギー性鼻炎の遺伝的な要因の考慮
・喘息、食物アレルギーなどの他のアレルギーの既往はないか→アレルギー素因の考慮
といったポイントで問診を行うことで、鼻炎の鑑別に役立ちますので、是非医師には上記の内容を積極的に伝えてください。
次に検査です。鼻鏡で鼻粘膜の観察し、アレルギー性鼻炎だと、粘膜が青白くふくらんでいたり、鼻水が粘膜の周りを覆っていたりします。鼻汁好酸球検査は、風邪の初期症状とアレルギー性鼻炎の症状を見分ける検査です。スライドガラスに鼻水をとり、試薬を加えて好酸球の数値を調べます。好酸球の数値が増加しているとアレルギー性鼻炎と診断されます。皮膚反応検査は、抗原を特定する検査です。抗原液を注射したり、ごく浅い傷を作って抗原液をたらす等をして、皮膚の反応をみます。抗原に対する抗体を持っていると、かゆみや腫れなどの症状が現れます。検査結果に影響を及ぼすため、薬を服用している場合は必ず医師に相談することが必要です。血中特異的IgE抗体検査は抗原を特定する検査で、採血し、抗原に対する抗体の有無を調べます。鼻粘膜誘発テストは抗原を特定する検査です。抗原を染み込ませたろ紙を鼻粘腹に置いて反応をみて、くしゃみや鼻水などの症状が現れることによって、抗原を特定します。これらのうち、鼻汁好酸球検査、皮膚反応検査、血中特異的IgE抗体検査がこどもでは実施可能な検査になります。
これらの問診、検査をもとに診断し、日常生活にどれだけ支障が出ているかを考慮しながら、まずは、抗原と接触しないようにする生活環境の整備の指導を行い、それでも症状が改善されないようであれば、内限薬のメリット、デメリットを十分説明した後に、治療を開始します。
こどものアレルギー性鼻炎は年々有病率が上がっていると言われていますが、必ずしも「鼻炎が続いている=アレルギー性鼻炎」ではありません。しっかりとした問診、診断過程を踏むことで正確に診断し、本当に必要な治療をするこTO、その一環として薬を飲むことがあるということを、医療従事者も保護者の方も知ることが大切です。
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